薔薇を連想させるピンク色のジャージ『マリア・ローザ』。
厳しい山岳が多いイタリアを舞台に開催される3大グランツールの1つ『ジロ・デ・イタリア』。
『ツール・ド・フランス』が世界最大のレースと呼ばれるのに対し、厳しい山岳の多い『ジロ・デ・イタリア』は世界最高のレースと呼ばれます。
開催時期も5月でグランツールの中で最も早いので、フレッシュな選手たちによるジャージ争いは熾烈なものになります。
この記事ではそんな『ジロ・デ・イタリア』の、各賞ごとの特別なジャージについて説明します。
ジロ・デ・イタリアの各賞ジャージ
1.マリア・ローザ
個人総合成績1位の選手が着用するピンク色のジャージ、それが『マリア・ローザ』です。
イタリア語で『マリア』はジャージを、『ローザ』はピンクを意味します。
つまり『マリア・ローザ』は、『ピンク色のジャージ』という意味です。
各ステージ終了時点で最も合計所要時間が少なかった選手が、次のステージで『マリア・ローザ』を着用します。
そして約3週間に渡る激戦を制し『マリア・ローザ』を着用して、最終ステージを終えた選手が『ジロ・デ・イタリア』覇者となります。
『ジロ・デ・イタリア』は『ツール・ド・フランス』に比べ、山岳ステージが多く勾配も厳しいです。
そのため3つのグランツールの中で、最もクライマーが活躍します。
厳しい山岳ステージでクライマーがオールラウンダーにタイム差を付けられるかどうかが、最終的な『マリア・ローザ』着用者決めるポイントです。
開催時期が5月なので山脈には雪が残っているところがあり、厳しい寒さや悪天候も選手を苦しめます。
厳しい山岳・悪天候・寒さ等の自然に加えて、強力なライバル達との戦いを制した選手が得られる最高の名誉が『マリア・ローザ』です。
『ジロ・デ・イタリア』を象徴するジャージでもあるので、ピンク色は『ジロ・デ・イタリア』のイメージカラーでもあります。
2.マリア・チクラミーノ
ポイント賞1位の選手が着用する紫色のジャージ、それが『マリア・チクラミーノ』です。
イタリア語で『チクラミーノ』はシクラメンを意味します。
『シクラメンのジャージ』という意味ですが、『シクラメン色のジャージ』というのが分かりやすい解釈です。
各ステージのゴールやステージ途中のスプリントラインを通過した順位に応じて与えられる『スプリントポイント』。
各ステージ終了時点でそのスプリントポイントの合計が最も多い選手が、次のステージで『マリア・チクラミーノ』を着用します。
最終ステージを終えて、スプリントポイントの合計が最も多い選手が『ポイント賞』受賞者となります。
2013年以前は『ブエルタ・ア・エスパーニャ』と同じく、平坦ステージと山岳ステージの『スプリントポイント』が同じに設定されていました。
そのため山岳ステージ上位のクライマーやオールラウンダーが、『ポイント賞』を獲得することがありました。
しかし2014年に平坦ステージに高いポイント・山岳ポイントに低いポイント、という設定に変更されました。
結果『ツール・ド・フランス』と同じく、『ジロ・デ・イタリア』における『ポイント賞』はスプリンターの為の賞になりました。
『ポイント賞』で首位を取りつつ厳しい山岳ステージを乗り越え最終ステージまで走り抜いた、真の実力があるスプリンターの証が『マリア・チクラミーノ』です。
2010年から2016年までは『マリア・ロッサ』という赤色のジャージが、『ポイント賞』ジャージでした。
3.マリア・アッズーラ
山岳賞1位の選手が着用する青色のジャージ、それが『マリア・アッズーラ』です。
『アッズーラ』はイタリア語で青色を意味するので、『青色のジャージ』という意味です。
各ステージの丘や峠等の頂上付近に設けられた、山岳賞地点を通過した順位に応じて与えられる『山岳ポイント』。
各ステージ終了時点でその山岳ポイントの合計が最も多い選手が、次のステージで『マリア・アッズーラ』を着用します。
最終ステージを終えて、山岳ポイントの合計が最も多い選手が『山岳賞』受賞者となります。
グランツールの中で最も山岳が厳しい『ジロ・デ・イタリア』での『山岳賞』は非常に価値があります。
基本的にはクライマーが獲得する『山岳賞』ですが、総合優勝したオールラウンダーが同時に受賞することがあります。
2018年『クリス・フルーム』は、『マリア・ローザ』と『マリア・アッズーラ』を同時に獲得しています。
2011年までは『マリア・ヴェルデ』という緑色のジャージが、『山岳賞』ジャージでした。
4.マリア・ビアンカ
開催年に25歳以下の誕生日を迎える総合成績が最も上位の選手が着用する白いジャージ、それが『マリア・ビアンカ』です。
『ビアンカ』はイタリア語で白色を意味するので、『白いジャージ』という意味です。
各ステージ終了時点で最も合計所要時間が少なかった、開催年に25歳以下の誕生日を迎える選手が次のステージで『マリア・ビアンカ』を着用します。
最終ステージを終えて、対象とされる選手の中で総合順位が最も高い選手が『新人賞』を獲得します。
過去に『リッチー・ポート』・『リゴベルト・ウラン』・『ナイロ・キンタナ』・『ファビオ・アル』等、その後グランツールレーサーとして活躍している選手が受賞しています。
『マリア・ビアンカ』は将来グランツールで活躍出来るかどうかを占う、若手選手にとって重要なジャージです。
5.マリア・ネラ
総合成績最下位に与えられる黒いジャージ、それが『マリア・ネラ』です。
『ネラ』はイタリア語で黒を意味するので、『黒いジャージ』という意味です。
もともとは1946年に第二次世界大戦の敗戦国となったイタリアが、国民に勇気を与えるために誕生したジャージです。
しかし最下位を取るために自らパンクを起こす選手が出てきたり、本来の目的から外れた醜い最下位争いが起こりました。
そのため誕生からわずか5年後の、1951年に『マリア・ネラ』は廃止されました。
そんな伝説のジャージ『マリア・ネラ』ですが、2019年に非公式ながら登場しました。
なんと『マリア・ネラ』を手にしたのは日本人の『初山翔』選手。
【お知らせ】NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ所属の初山翔が2019シーズンをもちまして、プロ選手としてのキャリアを終えることになりました。初山選手、大門監督のコメントを公式サイトに掲載。感謝の気持ちを胸に次のステップへと歩み出します。https://t.co/Qu4hEbPY9o pic.twitter.com/Z0e5sHIuhx
— NIPPO – Vini Fantini – Faizanè (JPN) (@NIPPO_RACING) December 1, 2019
2019年の『ジロ・デ・イタリア』で勇敢な走りをした初山選手に、主催者が是非ジャージを贈りたいと思い『マリア・ネラ』贈呈が実現したそうです。
最下位というと聞こえは悪いですが、出場・完走するだけでも非常に難しい『ジロ・デ・イタリア』でチームとして走っての最下位です。
チームのために働き、大逃げを決め、イタリアだけでなく世界中を沸かせた初山選手が獲得した『マリア・ネラ』は非常に名誉あるものです。
『マリア・ネラ』の本来の目的である「人々に勇気を与える」事を体現した日本人選手が、ジャージ廃止から70年近く経って主催者から贈られるという事実は、日本中のロードレースファンの胸を打ちました。
もしかしたら今後登場する事は一切ないかも知れない、幻のジャージです。
各賞ジャージに注目すれば『ジロ・デ・イタリア』観戦がもっと楽しくなる!
1.『マリア・ローザ』
・個人総合成績1位の選手が着用するピンク色のジャージ
・ライバル達と自然との戦いを制した選手に贈られる最高の名誉
2.『マリア・チクラミーノ』
・ポイント賞1位の選手が着用する紫色のジャージ
・獲得には厳しい山岳ステージを乗り越え完走する実力が必要
3『マリア・アッズーラ』
・山岳賞1位の選手が着用する青色のジャージ
・厳しい山岳が多い『ジロ・デ・イタリア』での『山岳賞』は非常に価値がある
4.『マリア・ビアンカ』
・開催年に25歳以下の誕生日を迎える、個人総合成績が最も上位の選手が着用する白色のジャージ
・未来のグランツールレーサー候補が獲得する
5.『マリア・ネラ』
・総合成績最下位の選手に贈られる黒色のジャージ
・廃止からおよそ70年後の2019年に『初山翔』選手が主催者から贈呈された
各賞ジャージについて理解していると、『ジロ・デ・イタリア』観戦がもっと楽しいものになります。