パワトレ(パワーメーターを使ったトレーニング)をしている人なら誰もが耳にする『SST(スイートスポットトレーニング)』。
・SSTは効率がいい
・FTPを上げたいならSST
『パワーメーター』については、こちらの記事をご覧下さい。
では何故、パワトレにおいて『SST』が重要視されているのでしょう。
しかもそれだけではなく、SSTはパワトレ初心者にも取り組みやすいトレーニングでもあります。
この記事は、パワトレに関する知識がまだあまり無い人に向けて書いています。
そのためパワトレに精通した『自分でTSS管理をしている人』や『自分で考えてトレーニングメニューを組める人』にとっては、当たり前の事しか書いていないのでご注意下さい。
『パワトレ』には合わせて『ローラー台』や『Zwift』もオススメです。
SSTってそもそも何?
SSTは『スイートスポットトレーニング』のアルファベット略語で、スイートスポットと呼ばれるゾーン(FTPの88〜94%)で行われるトレーニングの事です。
トレーニング効果に対する生理的負荷が絶妙な、文字通り素晴らしい(スイートな)トレーニングです。
SSTの具体的な行い方
SSTのメニューとして有名なものが、SSTの定番とも言える『SST 20分×2』です。
②FTP比88〜94% 20分
③レスト 5分
④FTP比88〜94% 20分
⑤クールダウン 10分〜15分
【TRAINER ROADの『SST 20分×2』のワークアウト『Eclipse-3』】
SSTの基本とも言える『SST 20分×2』ですが、個人の体力や経験に合わせてトレーニングのメイン部分を変える事が出来ます。
・『SST 12分×3』
・『SST 15分×3』 等
『SST 20×2』の完遂が簡単な場合
・『SST 20分×3』
・『SST 30分×2』 等
「『SST 30分×2』どころか1時間でも2時間でも余裕〜」なんて人がいたら、おそらくFTPが正しくないので再計測する事をオススメします。
SSTは素晴らしいトレーニングですが、それは決して楽なトレーニングという意味ではありません。
SSTは適度にキツイトレーニングです。
SSTは継続しやすい
ロードバイクのトレーニング効果がしっかりと出てくるのは、トレーニングを開始してから約3ヶ月後だそうです。
これは1日だけトレーニングしてそれ以降は何もせずに約3ヶ月後に効果が出るという意味ではありません。(当たり前ですが・・・)
約3ヶ月間トレーニングを継続して、初めてトレーニングを継続した期間に見合った効果を得られるという事です。
参考記事はこちらです。
そのため、ロードバイクのトレーニングは継続して行う必要があります。
それもただ単にロードバイクに乗るだけではなく、目的意識を持ったトレーニングの継続が大事です。(パワトレではW数が明確な目標になります)
しかしトレーニングの継続は、強くなる上で必要にも関わらず中々に難しいものです。
トレーニングを継続出来ない理由としては、『やる気・時間・場所』など個人で解決するべき問題を除けば主に以下の2つだと思います。
→トレーニングを安定して継続出来ない
当日のトレーニング予定の内容がキツイので、トレーニング前にモチベーションが下がる
→繰り返すうちにトレーニング自体が『苦しい嫌なもの』になってやめてしまう
SSTは丁度良い負荷をかけられる
まず、『トレーニングを安定して継続出来ない』という問題についてです。
トレーニングと回復はワンセットで、『トレーニングで負荷をかけ肉体を破壊し、回復によって以前受けた負荷に対してもっと効率よく耐えられるように成長・適応する』というのが強くなる一連の流れです。
そのため回復が追いつかない量のトレーニングを闇雲に行っても、肉体にダメージが蓄積されるばかりで強くなる事は出来ません。
ひたすら負荷の高いトレーニングを繰り返していては、いずれ『以前は完遂出来たトレーニングメニューを完遂出来ない』という状態に陥るでしょう。
しかしパワトレやトレーニング自体に慣れて無い人は、どの程度のトレーニングが丁度良い負荷なのかが分からないと思います。
ですが、これが同じ約1時間のL5やL6のトレーニングだと、個人のレベルにもよりますが連日の完遂は難しいと思います。
僕の経験則ですが、約1時間のL5以上のトレーニングにより脚に蓄積されたダメージが次の日にも残っている事はよくあります。(軽い筋肉痛のような感じ)
パワトレにある程度詳しい人は「TSS(トレーニングストレススコア)が100を超えなかったら1日で回復するだろ」と思うかもしれません。
しかし、TSSだけで測れない肉体的ダメージの種類もあると僕は感じています。
SSTは丁度良いキツさ
次に、『トレーニング自体が苦しい嫌なものになってしまう』という問題についてです。
先程は肉体面についての事でしたが、こちらは精神面に関する事です。
人間には心があります。
そのため、仮に『負荷と回復のバランスは完璧で毎日行えて効果も高い。しかし地獄のようにキツイトレーニング』があったとしても、毎日こなせる人は少ないでしょう。
何故なら肉体的には完遂可能なトレーニングでも、「あんなキツイトレーニングやりたくない」とモチベーションが上がらないからです。
どんなに効果的なトレーニングでも、キツすぎて始める前に憂鬱になるトレーニングの継続は並の精神力では難しいです。
キツイトレーニングに耐えるための小技については、こちらの記事をご覧下さい。
これは僕の個人的主観ですが、SSTは丁度良いと感じるキツさのトレーニングです。
「今日は『SST 20分×2』か」くらいの気軽な感じで開始出来て、トレーニング中も適度にキツく、終了後も激しい疲れではなく心地よい達成感を感じます。
これが『L4(FTP比100%) 20分×2』だと少し身構えてトレーニングを開始しますし、『L5(FTP比120%) 3分×7』だと開始前に少し憂鬱になります。
FTPテスト(20分走)ならその日の朝から憂鬱になります(笑)
逆に『L3(FTP比80%) 1時間』などSSTを下回る領域では、「退屈だな〜」と感じてしまいます。
もちろん精神力は個人差がありますし、トレーニングによって精神的にも強くなっていくので誰もが『SST=丁度良いキツさ』とは限りません。
しかし、わざわざ高価なパワーメーターを導入してトレーニングを始めようという人であれば、SSTはそこまでキツく感じないと思います。
何故ならパワトレを始めるまでのよくある流れで、ロードバイクに乗る事には慣れ最低限の体力はついているはずだからです。
ロードバイクを購入してハマる
→無我夢中で乗る
→もっと速くなりたいと思い、色々と調べるうちにパワーメーターを知る
→パワーメーターを導入する
→パワーメーターを使ったトレーニング方法について調べる
もし『SST 12分×3』が「死ぬほど辛い・・・」と感じるなら、ロードバイクのトレーニングを行う上で必要な最低限の体力がついてないと思います。
まずはロードバイクに乗る事自体に体を慣らすところから始めましょう。
また『まぁまぁキツイ・・・』と感じる人は、SSTを繰り返しているとすぐに慣れてくると思いますので、最初の頃は頑張って続けてみて下さい。
最低限の体力をつけるために『Zwift・6wk Beginner FTP Builder』もオススメです。
SSTはパワトレ初心者にオススメ
FTP向上への効果が高い
パワトレを始めた人が、とりあえずの目的とするべきものがFTPの向上です。
FTPは言ってしまえばライダーの基礎戦闘力のようなもので、まずはFTPを上げない限りどんなタイミングでも自分が目標とする走りは出来ないでしょう。
・ヒルクライムでタイムが縮まらない
・平坦路の巡航速度が上がらない 等…
ここでは『FTP=絶対的なもの』として説明しましたが、重要なのはロードバイクで速く走る事です。
ただFTPを上げれば、他の事は何も考えなくてもいいわけではありません。
他の『ペダリング』や『ポジション』などのFTP以外の走る上での重要な事は、ここではあえて書いていないのでその点はご注意下さい。
FTP向上には『パワーブリーズ』もオススメです。
トレーニングメニューに悩む必要が無い
パワトレは慣れてくると、自分が想定する場面に対応したトレーニングメニューを作る事も可能です。
・L4付近での集団走行中の細かなペースアップに対応するためのメニュー
・アタックを何度も繰り返せる回復力を身につけるためのメニュー 等…
まずは3ヶ月間SST!
SSTはパワトレを続ける以上、誰もが取り組むであろうトレーニングです。
正直SSTの方法さえ知っておけば、『SSTが重要な理由』を知らなくてもトレーニングの成果はあるでしょう。
それでも、SSTのメリットを知っていればトレーニングのモチベーションは上がると思いますし、ロードバイクのトレーニングにおいて必要な『継続』の重要性を理解出来ると思います。
『継続』の重要性とSSTについての情報を頭に入れて、まずは3ヶ月間SSTに取り組んでみて下さい。
しっかりとSSTを継続する事が出来たなら、あなたは3ヶ月前より1段階強くなっているはずです。
そして、いずれSSTだけでは超えられない壁のようなものに当たって伸び悩む時が来ると思います。
その時は、更に強い負荷や新しい刺激を体に与える必要があります。
そのために役立つ知識や情報をこのサイトで出来る限り発信していくので、必要と感じた時にはぜひ役立てて下さい。
またパワトレを行うなら読んでほしい、パワトレの教科書とも言える本があるのでオススメです。